剣道錬士六段で指導者の、とよクマ(@toyo_kuma)です。
「女子でも剣道ができるか心配」
「男子と一緒に試合をするのは不利じゃない?」
今回は、女子の親御さんに読んでもらいたい内容をまとめました。
結論から書くと、女子の方が有利な長所を伸ばしましょう。
- 体の柔軟性
- 共感性
この2つを伸ばし、具体的な技術( 一眼二足三胆四力)に落とし込み、力と瞬発力で押してくる男子に対抗しましょう。
また、これから剣道を始める方のために、女子剣道の基本情報やアイテムも紹介しています。
とよクマ
それでは、本編に入りましょう。
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小学生女子の剣道の試合は男女一緒
小学生の剣道は、試合にもよりますがほとんどが男女混合で試合に出ます。
剣道の試合は主に、
- 個人戦(1対1の勝ち上がり)
- 団体戦(5対5で戦い勝敗数で勝者を決定)
の2種類です。
一般的に、ほどんどのスポーツは男女別で試合をしますが、なぜ剣道だけは混合なのでしょうか。
- 小学生は運動神経や体格差が大きくない
- 女子と男子が平等に勝負できる競技内容
一見スポーツ的な要素だけ考えると男子の方が有利に感じますが、剣道は武道です。
アスリート的な要素(瞬発力やパワー)以外の部分で、勝負ができる特性があります。
この先の記事で、
- 女子の特徴と男子より有利なポイント
- 女子が男子に勝てるポイント
を、掘り下げていきます。
女子の特徴と男子より有利なポイント
男子と女子を比べると、筋力(パワー)や瞬発力は劣ります。
小学生のうちは女子の方が成長が早いケースもあるので、頭1個分大きな女子と戦い、男の子が力負けをする試合も少なくありません。
ですが、そのまま力で勝つことが先を考えると良い選択ではありません。
RPGに例えると、初期値のパワーは多いけど、レベルアップ(成長)による配分は少ない。
のが、女子の特性です。
男子も高学年になると、体の小さい子でも男性のパワーと瞬発力を感じるようになってきます。
このあたりを境に、女子も力押しができなくなるのです。
先を見据えると、女子の特性を知り、生かし、逆に武器に変える剣道を最初から身に付けたほうが有利です。
女子には男子より有利な特性が2つあります。
体の柔らかさ(柔軟性)を武器にする
女子は男子に比べ、体が柔らかい傾向があります。
特に全身の関節は柔らかく、柔軟性があります。
剣道では、全身の身体の関節をしなやかに使うのが有利です。
素振りでは、上半身の手首、ヒジ、肩の関節を柔らかくしなやかに使い、ヘッドスピードを出せるように意識しましょう。
竹刀のヘッドスピード重要な話は、初心者が知っておきたいコツ10選で書いています。
ぜひご一読ください。

踏み込みや打突では、股関節を柔らかく使い体をできるだけ水平に(前方に)出すようにしましょう。
水平とは、踏み込みの右足を前に出した時に頭が上下しないことです。
剣道の打突の速さは、瞬発力(筋力)に依存します。
ですが、相手が感じる(体感)速さは別の部分が重要なのです。
どれだけ瞬発力があっても、打突のモーションがバレバレ(大振り)では、攻撃することが読まれてしまいます。
女子は、関節の柔らかさを最大限生かし、打ち出す時のモーションを最小限にすれば、男子と前に出る技でも勝負ができます。
とよクマ
ただ、前に出る(出ばな技)で男子と勝負をするのは、小学生のうちが限界です。
体が出来上がった男子とでは、勝負になりません。
そこから勝負になるのが、技です。
応じ技の技術を磨くことで、男子と対抗しましょう。
応じ技は、関節の柔らかい女性が有利です。
- 面返し胴(最重要)
- 面すりあげ面
- 小手すりあげ面
3つの技は比較的打ちやすく決まりやすい技なので、しっかりとみがいておきましょう。
とよクマ
共感性で相手の心を読む
女性は男性より共感性(感受性)が強いと言われています。
歴史をさかのぼると、
- 男子は狩りで獲物をとる
- 女子はコミュニティを作り共同で生活
つまり女子は協調の力で生きてきました。
現代ではあまり関係のない話ですが、どちらかというと歴史の時代の方が長いです。
DNAに協調性の強さが刻まれていても、不思議ではありません。
この特性を生かし、相手と気持ちを合わせましょう。
相手と動作を合わせるのではなく、気持ちを合わせるのです、
気持ちを合わせると、相手の気持ちが自分の心の中に入ってきます。
- 打ちたい
- 打たれたくない
- 相手の狙い
なんとなく、伝わってくると思います。
相手のやりたい事をつかんだら、やらせてあげればいいのです。
打ちたければ打たせてあげれば、いいのです。
こちらも相手が来ることがわかっているので、さそいを入れてあげれば、かんたんに応じられます。
何も考えずに、ただ相手とガチャガチャ面を打ち合っているだけでは、何の工夫もないですしパワーの男子に打ち負けます。
剣道において共感性とは、
「相手が何をしたいか」
を読む力です。
相手の気持ちに逆らわず、気持ちのとおりに行動させてあげましょう。
そして、「待ってました!」とばかりに、応じ技を放てばいいのです。
剣道で女子が男子に勝つためのポイント
剣道には、一眼二足三胆四力 という、言葉があります。
剣道で大事な優先順位をあらわしています。
- 眼
- 足
- 胆力(心の強さ)
- 力
4つの言葉を女子の剣道の視点で考えていきましょう。
女子の特徴を強みにする
4つの言葉に入る前に、先ほど女性の強みを生かした具体的な例を書きました。
大事な事なので、もう一度復習しましょう。
- 関節を柔らかく使い技を出す
- 相手と共感し気持ちを読む
この2つは大きな武器になり、基本の部分です。
2つ基本を頭に入れながら、4つの言葉の内容をイメージしてみてください。
眼を鍛える
重要なのは、眼の反射神経ではありません。
眼から自分の頭の中に入ってくる、相手の情報です。
たくさん経験を積むことで、眼を通して色々な情報が頭の中に入ってきます。
色々な人と好き嫌いを選ばずに、稽古をしましょう。
眼が良くなると、相手が何をしたいか。
が、少しずつわかるようになってきます。
眼を鍛えると応じ技が打てなくても、反応はできるようになります。
応じ技を打つ第一歩は、相手の動きに反応することです。
つまり眼が相手の動きに遅れないことが重要です。
足を使う
足さばきを自由自在に素早く、できるようになりましょう。
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男子の瞬発力は、どこかで一度、力をためる瞬間があります。
左足が軸になるので、一度左足の位置を固定しないと飛べません。
飛ぶチャンスは、ここだ!と思った間合い(距離)です。
もし、相手の男子が瞬発力(スピードと力)に頼ってくるのであれば、相手が打てる間合いに居なければいいのです。
足を上下左右ナナメに使い、捕まらなければいいのです。
つまり相手に、「やりにくいなぁ」と思わせればOKです。
先ほど、気持ちを合わせると書きましたが、合わせられる気持ちをあえて合わせないのも作戦です。
ただし、忘れないでほしいのは試合としてはよいのですが、剣道としての評価は低いです。
剣道はお互いで勝負所を作り出し、正々堂々戦うのが上達の近道です。
心(胆力)
相手の気持ちに合わせるのは、弱さにつけこまれることではありません。
例えば、友達とお昼を食べようかという時に、同じカレーになりました。
- 気弱になって相手の言うことに合わせる(本当はラーメンがいい)
- 自分の気持ちを大事にする(本当にカレーが食べたい)
結果はカレーで変わりませんが、心の中は全くちがいますね。
剣道は格闘技で戦いですから、相手と向き合い逃げずに立ち向かわなくてはなりません。
自分の力を信じ、自分自身を認め、自分の気持ちを持ち、心を強く持つ必要があります。
つまり、相手より強い心で相手に合わせてあげるのです。
相手の心の方が強ければ、合わせているように見えて、つけこまれているのです。
とよクマ
自分の気力を燃やし、相手に立ち向かいましょう。
力に頼らない
力に頼る剣道は、長くは続きません。
ただ、大人の女子の試合を見ると、男子顔負けのアスリート勝負であることは確かです。
女子同士の中であれば、筋力がある方が有利です。
しかし、大人になっても昇段審査は男女混合です。
試合に強くなるだけではなく、段位も狙う場合は力に頼るのは控えましょう。
女性の筋トレでおススメなのは、体幹トレーニングです。
ただし、体がしっかりと成長してからにしましょう。
体格差は関係ない
以上をまとめると、一部のトップアスリートを除けば剣道に体格差は関係ありません。
運動能力も良ければ有利ですが、決定的な差にはなりません。
女子の得意分野を意識し、集中して技能を身に付けることで、体格差や運動能力は小さな問題になります。
剣道に限らず、いつだって工夫が大事です。
恵まれた環境からスタートなんて、人生そうはないものです。
逆に、自分にあるものを最大限に生かし、工夫と知恵で乗り切るのが大事なのです。
剣道女子の将来は
女子が剣道を続けると、大人になってどんなキャリアを歩むのでしょうか。
あわせて、剣道が将来有利になるポイントを解説していきます。
剣道でプロの世界はない
まず、剣道ではプロの世界はありません。
プロとは、企業などがスポンサーになり競技そのものに集中できる環境を持つ人のことです。
つまり、剣道(の試合に出る)だけでご飯を食べている人は、日本には存在しません。
しかし、半分は剣道でご飯を食べている人はとても多いです。
もっともポピュラーなのが、警察官です。
剣道特別訓練員という枠があり、優先して稽古の時間が割り当てられます。
剣道特別訓練員は、剣道に勝つ集団というより、日本文化である剣道を正しく後世に伝えるために専門的な剣道教育が受けられます。
ただ実際は、それなりに成績を上げないと残ることはできません。
ちなみに剣道そのものが仕事ではなく、ほとんどが機動隊所属で、機動隊のお仕事もちゃんとされています。
剣道特別訓練員は9割が男子なので、女子が入る枠としてはかなり小さな枠となります。
高校か大学の試合で、全国それも上位レベルが必須です。
ほかには、
- 教員で剣道部の顧問や監督になる
- 実業団で剣道部のある会社に就職する。
が、一般的です。
剣道特別訓練員にくらべると、かなり稽古の時間は減るのが一般的です。
就活などでポイントが高くなる
人事的には、まったくポイントが同じでどちらを採用しようかと考えたら、武道をしていた人間を選ぶ。
と、いうぐらいには有利です。
一応ですが、剣道の段位も履歴書にはかけます。
剣道は他のスポーツと違い段位があるので、履歴書にかける特典があります。
とよクマ
と、ちょっと不純な動機で始めたのはナイショです。
剣道は女子も習える
子供が剣道を習うメリット10選と基本情報 でも書きましたが、小学生でも女子の数は少なくありません。

小学生の割合としては、道場にもよりますが、6:4~7:3ぐらいで女子はいます。
中学生になると部活動で剣道部があるので、一気に競技人口が増えます。
中学以降は女子だけで団体戦5人でチームを組み、試合に出場します。
個人差もありますが、小学生は同じ学年だと女子の方が読解力のあるケースが多いです。
とよクマ
剣道用語や話はこのブログのようにどうしても難しくなりがちですが、女子は低学年でも理解していたりするので驚かされます。
もちろん女子なので、先生方もやさしく教えてくれると思います。
怖がらず、一度体験に行かれてみてはいかがでしょうか。
女子の競技人口は多い
剣道の競技人口は実はとても多いです。
中学生の女子剣道部員も、全国で3万人以上もいます。
全体の競技人口では、全体で160万人の中、45万人ほどが女子です。
この人口は有段者登録数の数だと思うので、実際にアクティブで稽古をしている人はもっと少ないとは思います。
ですが、人数の1/3が女子というのは体感で納得できる数字です。
参考までに、柔道の競技人口は国内では20万人です。
実は剣道の方が、競技人口が多いのです。
剣道具は女子も男子も同じ
剣道具は小中までは、特に女子用はありません。
道着と袴も同じく、男女兼用です。
サイズで区切られているので、自分のサイズにあった防具を買いましょう。
とよクマ
初心者(低学年)であれば、そこまで高価な防具でなくてもOKです。
3,4万程度の防具で十分でしょう。
高学年~中学生は、もう少しグレードの高い防具を選びましょう。
女子で意識したいのは消臭です。
消臭スプレーを使い、しっかりと陰干しすれば、それほど匂いは気になりません。
小手の匂いが気になる、汗のヌメヌメが気になる場合は、手袋がおススメです。
手袋さえ洗えば、毎回清潔に稽古ができるのは助かります。
道着の下にインナーを着るのもよいでしょう。
途中で上から手軽に脱げる感じが、とても使いやすそうです。
道着もインナーも化学繊維の速乾性をすすめる場合が多いですが、ぼくは綿100%がおススメです。
汗をしっかりと吸ってくれるほうが、防具が傷みません。
剣道の防具の選び方!小学生など入門者向け基礎知識 では、防具の選び方や基礎知識についてレポートしています。
ぜひ、合わせてご一読ください。

剣道の竹刀は女子も男子も同じ
小学生までは、女子も男子も竹刀のサイズは同じです。
竹刀は消耗品と考えてください。
そして1度に2本は稽古に持っていきます。
竹刀の手入れも剣道人としては大事な技術です。
すこしささくれが出たぐらいであれば、竹刀削りで再生させましょう。
緩んだ柄を付け替えるのは機械が無いと大変なので、買い替えがいいでしょう。
年間で考えると、ゆるめの練習でも竹刀5本は必要ですし、週3回であれば10本ぐらいはラクに消費すると思います。
数が多いほうが得なので、5本以上はまとめて買うのがおススメです。
剣道女子が知りたい!男子より有利なポイント8選と基本情報まとめ
スポーツ的な要素を考えると、瞬発力とパワーが重要と感じます。
剣道もアスリートの世界では瞬発力とパワーが大事ですが、一般愛好家にとって力はそれほど大きな要素ではありません。
とよクマ
努力で克服できない短所をどうにか改善しようとするより、伸びしろのある長所に力を入れたほうがずっと良いです。
女子に共通する長所は、体の柔軟性と共感性です。
剣道の勝負は、ほんの一瞬で決まります。
一瞬を逃さない対応力は、力ではなくテクニック(技術)です。
先生方の剣道を、よく見てください。
大学生ぐらいの若い子でも、60代以上の先生にかないません。
先生は強い心と技で力だけの剣道に対抗し、勝つばかりかむしろ圧倒しているのです。
最後になりますが、この記事が女子のお子様にとって剣道を始めるきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。
とよクマ
中学年以降である程度基本ができて、試合に出てもなかなか勝てない。
そんな時に、ぜひ親御さんのかみ砕いた説明のもと、お子様とご一緒に読んでいただければありがたく思います。
ほかにも色々と剣道について記事を書いていますので、ぜひあわせてご一読ください。