剣道錬士六段で指導者の、とよクマ(@toyo_kuma)です。
「剣道の素振りのコツが知りたい!」
「初心者だけど素振りで何を意識すればいいの?」
とよクマ
ダイジェストで内容を説明すると、
- 素振りは竹刀操作を体得する上でとても重要
- 肩、ヒジ、手首を使い剣先の遠心力で振る
- 室内で正座素振りは効果的
- 肩甲骨と手首の可動域を広げる効果がある
- 素振りは筋トレにもなる
このページをご一読いただけると、素振りのコツを一通り学べます。
学んだコツを意識して稽古に取り組むことで、自身の剣道が大きく成長する原動力になります。
とよクマ
それでは、本編に入りましょう。
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素振りで得られる剣道の効果
剣道をはじめて一番最初に習うのが、素振りです。
素振りには、剣道の動作の基礎が詰まっています。
本気で素振りに取り組むことで、大きな成長が見込めます。
とよクマ
実践的な剣道を見ると、素振りの動作と全然違うので、
「素振りは本当に意味があるのか?」
と、疑問に感じると思います。
とよクマ
- 手の内や手首の使い方が身に付く
- つまり竹刀の振り方を身体で覚える
- 竹刀を使った全身運動を体に染み込ませる
- 竹刀を振る力の強弱のポイントが身につく
- 左右面では手首の返し方を習得する
- 筋トレになる
剣道の動作と素振りの動作は違うように見えますが、実は竹刀の使い方は共通しています。
とよクマ
最初から小さく速くの実践的な動作を身に付けるより、大きい動作から始めたほうが竹刀を振るコツは覚えやすいです。
素振りの技術=剣道の技術 なので、剣道を続ける限りは常に素振りに向き合いましょう。
とよクマ
剣道の素振りで意識したいコツ10選
素振りの効果を知ったところで、素振りで意識したいコツを10個ほどご紹介します。
正しい素振りを身につけるために、重要なポイントを厳選しました。
とよクマ
自分自身に向き合いながら、工夫と回数を重ね、素振り進化させていきましょう。
正しい構えから自然に振りかぶる
素振りの起点は構えです。
構えが正しくなければ、素振りは正しくできません。
構えが原因で正しく触れないケースが、実は一番多いです。
とよクマ
剣道の構えのコツ【初心者向け】大切なポイント では、構えで意識したいポイントを解説しています。
ぜひ、あわせてご一読ください。

振りかぶった竹刀の角度は約45度
正しい構えから、腕を振り上げ相手が見えるまで振りかぶります。
おおよそですが、おでこの前あたりに左手がきます。
この時の竹刀の角度は、45度ぐらいになります。
とよクマ
最初は、ゆっくりと振りかぶりゆっくり振り下ろしましょう。
上達してきたら、ゆっくり振りかぶり速く振り下ろしましょう。
最後には速く一拍子で上げ下げができるようにしていきましょう。
まっすぐ正しく振るには下半身の安定が重要
まっすぐ振りたい時には何となく手を意識しますが、コツは別の部分にあります。
素振りも足が重要で、素振りは全身を使う全身運動です。
ついつい、振る=上半身(手と腕)に意識がいきますが、下半身の安定性が不可欠です。
とよクマ
- 正しい構えからの足さばき
- 丹田に力を入れ
- 腰を安定させる
素振りは、体幹の力で竹刀を振ります。
腕の力がないから竹刀がブレるのではなく、体幹の力が足りないから、竹刀に振られてしまうのです。
体幹を意識して竹刀を振ると、素振りは劇的に変化します。
まっすぐ振るには左右の手の力をバランスよく
素振りは左手を中心に、右手を添えるイメージで振る、などの指導をよく聞きますが、実際は左右の力のバランスが重要です。
左手は確かに軸になりますが、右手に力を入れすぎるのが問題なのです。
つまり、右手の力を抜いて左手に意識を持っていくぐらいのイメージで、ようやく両手の力が均等になります。
とよクマ
素振りを右手に持っていかれると、
- 体がブレる
- 手の内が利かない
- 手首も利かない
とよクマ
素振りは、左右の手をバランスよく使うとまっすぐ振れますが、コツとして
- 左手に意識を持っていきつつ
- 右手の脱力を意識する
これでようやく、力が均等ぐらいになると考えましょう。
剣先を遠心力で前方に飛ばすイメージ

上級者の素振りは、遠心力で剣先を前方に飛ばすので、楕円の軌道を描きます。

一方、初心者の素振りは手元を素早く振ることに意識がとられ、剣先が振れていません。
上級者の剣先が楕円で前後の動きに対して、初心者は円形で上下の動きとなります。
手元をどれだけ早く動かすかではなく、遠心力を使い剣先をどれだけ早く相手にむかって飛ばせるかが重要です。
振り下ろしは肩、ヒジ、手首の順に
剣先を前方に飛ばす遠心力の作り方を、詳しく学んでいきましょう。
遠心力を生み出すのは、強い体幹の他に
- 肩
- ヒジ
- 手首
の3つの要素が重要です。
- 肩は肩甲骨を使い柔らかく広く稼働させる
- ヒジは柔らかく緩ませた状態で振りかぶり(構えと同じヒジの余裕)
- インパクト(打突)の瞬間には伸ばす
- 手首のスナップをしっかりと利かせる
肩の可動域は素振りを重ねるごとに自然と広がります。
とよクマ
遠心力を使う手順は振りかぶったのちに、
- 肩から動かし
- ヒジを内側に絞りながら前に出し
- ヒジから先を伸ばし
- 最後に手首のスナップをかける
とよクマ
母ナツ
魚釣りのイメージが、とても近いです。
片手で釣竿をもち、針を遠くまで投げる動作を剣道では両手で行います。
肘を伸ばし手首を使いスナップをきかせる
ヒジはバネと同じ要領で、緩ませたヒジを伸ばす意識をもちましょう。
初心者はヒジに力が入り、伸縮しないケースが多いです。
とよクマ
振り上げた後、ヒジを内側に絞りながら前に出し、次にヒジから先の腕を前に振ります。
最後に手首のスナップをしっかりときかせましょう。
スナップを利かせないと、殴ったような衝撃となり、とても痛いです。
とよクマ
力を使うのは一瞬ですぐに脱力
スナップの瞬間に、右手と左手の小指と薬指を内側にキュッと多少内側にしぼりますが、すぐに脱力をしましょう。
素振りで唯一力を入れるのは、このスナップの瞬間だけです。
力を入れるイメージより、
- スナップの瞬間に指を使うことで遠心力の更なる加速
- 遠心力で前方に引っ張られる竹刀を制御するため
に、必要な動作と考えましょう。
とよクマ
また、すぐ次の動作に移るために即脱力が必須です。
インパクトの瞬間に内側に絞った薬指と小指は、すぐに力を抜きましょう。
とよクマ
実際に面を打った時に、竹刀が当たった反動で跳ね返るのが理想です。
脱力は、残心の動作でも重要です。
振り下ろした剣先は鼻の位置
素振りの剣先は、相手の鼻の位置まで下げましょう。
一本一本、しっかりと相手の命を絶つ気持ちで一刀両断を意識しましょう。
振り下ろした左手の位置はみぞおちに納まる
剣先が鼻の位置になると、一番低い位置にある左手は、みぞおちの辺りに納まります。
この時に竹刀に(遠心力の強さに)振られず、しっかりと体勢が安定しているのが理想です。
剣道の素振りの種類
素振りのコツの次は、具体的な素振りの種類について解説していきたいと思います。
素振り別で意識したいポイントをまとめました。
上下素振り
大きく振りかぶり、膝のあたりまで振り下げる素振りです。
多くの道場では、この上下素振りから始まると思います。
上下素振りは、基本である素振りの更に基本の動作が詰まってます。
とよクマ
上下素振りは特に、肩の可動域を広げる効果があります。
動作を見直したい時は、上下素振りでひとつひとつ確認する作業は欠かせません。
正面素振り
剣道の基礎が詰まった正面素振りです。
刃筋を意識して、まっすぐ振るイメージを大事にしましょう。
剣道の打突に最も近いので、実際に面を打つ感覚も身につきます。
- 打突力が足りない
- 伸び悩んでいる
こんな時には、正面素振りを見直してみましょう。
時にガムシャラに本数をこなすことで、大きく成長します。
とよクマ
左右素振り
左右素振りは、切り返しのための練習?
と思いますが、実は少し違います。
剣道において、手首を返す動作はとても重要です。
とよクマ
左右面は45度の角度が基本ですが、この延長線上に胴打ちがあります。
ためしに左右面の剣先を、胴の位置まで下げてみましょう。
右側であれば逆胴、左側であれば胴打ちになります。
とよクマ
左右面は刃筋が利いていないケースがとても多いです。
最初はゆっくりと、刃筋を意識しながら振りましょう。
とよクマ
母ナツ
跳躍素振り
一挙動の早素振りともよばれる、跳躍素振りです。
跳躍素振りは、以下のような効果があります。
- 剣道のリズム感を身に付ける
- 早い動作の中で体を崩さずに体勢を整える
- 運動量も多いので体が鍛えられる
とよクマ
まずは、跳躍の足さばきができるようになりましょう。
将来的に二段打ちなどの連続打ちの動作に繋がります。
- 左足で体全体を蹴り出し
- 水たまりを飛び越えるイメージで
- 右足から着地し
- 左足を瞬時に引きつける
- (後退は)右足で体全体を蹴り出し
- 水たまりを飛び越え
- 左足から着地し
- 右足を素早く引きつける
足の動作だけでも大変なので、何度も練習しましょう。
素振りは室内でも正座でできる
環境にもよりますが、外で竹刀を振るのは避けた方が良いかもしれません。
とよクマ
母ナツ
素振りは家の中がおススメです。
正座をすることで天井も気にすることなく振れます。
意識としては、素振りの反動を丹田(下腹)でしっかりと抑えましょう。
とよクマ
丹田と体幹も鍛えられるので、室内の正座素振りはおススメです。
剣道の素振りで肩甲骨の可動域を広げる
大人になってから剣道を始めた人で、なんだか動きが硬いなぁと思うケースのほとんどは、肩の可動域が原因です。
子どもの頃からの鍛錬で肩の可動域が広がっていれば、やわらかくしなやかに肩を使えますが、大人からでは特別な対策なしに柔らかくするのはむずかしいです。
ただ、肩の可動域を広げ肩甲骨を使うことが大事だとわかれば、素振りの他にもストレッチなどを重ね、可動域を広げることは十分に可能です。
とよクマ
素振りやインパクト(打突)の速さは、筋力の要素だけではありません。
むしろ筋力よりも、肩をはじめヒジや手首を柔らかくしなやかに使い、遠心力を生み出す動作を身に付けるほうが効果があります。
素振りをコンパクトにしたのが面打ちなどの打突と考えると、打突でも肩の可動域はとても重要な要素のひとつです。
剣道の素振りの回数は短く区切ろう
素振りは、1000本連続より20本×50回のように区切るのがおススメです。
意識が途切れた時点で、何の効果も無いと考えましょう。
一本一本、自分の課題を明確にしながら気持ちを込め、しっかり相手を打つイメージが大切です。
とよクマ
ヒジや肩、手首を痛めてしまうので、1日50本程度で十分です。
大事なのは本数ではなく、課題を明確にし、一本一本を大切に振ることです。
とよクマ
素振りは剣道の筋トレになる
素振りは剣道の筋トレ、トレーニングにもなります。
第一線で活躍するアスリートでなければ、素振りは十分なトレーニングになります。
剣道で必要な筋力は、剣道で鍛えるのが初心者には最も効率が良いです。
とよクマ
先ほど解説した3種類の素振りに加え、股割りや踏み込み素振りなど、下半身に負荷をかける素振りもあります。
特に股割り素振りはおススメで、30本もやれば初日は座り込むほど足がパンパンになります。
大人であれば、さらに素振り用お重量木刀を使うのがおススメです。
素振りで剣道に必要な柔らかく強い手首を鍛える
剣道において、柔らかく強い手首は、とても重要です。
柔らかく強いとは、相反しているように思いますが、実は可能です。
とよクマ
肩と同じように、手首もまた長年の鍛錬によって可動域(やわらかさ)と強さを身に付けます。
日頃から手首のストレッチを大事にし、可動域を広げるケアを欠かさないようにしましょう。
また素振りで手首を使うイメージも重要です。
とよクマ
まとめ
素振りは剣道の基本中の基本です。
昔は3年ぐらい時間をかけ、防具を付けずに素振りを含めて基本動作を稽古しました。
今は時代が変わり半年ほどで防具を付けます。
とよクマ
時代の流れなので、防具を早く付けるのは子どもを飽きさせず、良い傾向だと思います。
ただ、防具を付けた瞬間に基本を卒業し、素振りに真剣に取り組まなくなるケースがほとんどです。
とよクマ
素振りの時間をいかに本気で取り組めるかに、剣道の成長がかかっています。
とよクマ
母ナツ
剣道の防具の選び方!小学生など入門者向け基礎知識 では、初心者にむけて防具の選び方をレポートしています。

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